院長挨拶
田上接骨院 院長の田上耕三です。
当院は令和6年で開業35周年を迎えました。これまでに延べ40万人以上の患者様にご来院いただき、誠に有難いことだと思っています。
皆様に選ばれ続けてきたことに、心から感謝申し上げます。

接骨院は昔、「骨つぎ」と呼ばれていました。現在も柔道整復師法では「骨つぎまたは接骨院」と表示することが義務付けられています。国家資格が「柔道」という名を冠しているのは珍しいことですが、これは柔道が歴史的に怪我を治す技術を内包してきたことに由来します。稽古中の骨折、脱臼、捻挫、打撲などの怪我を治す技術が師弟関係の中で伝承され、それが現代の接骨院の基盤となっています。接骨院では「急性期のケガ」である 骨折、脱臼、捻挫、打撲、筋肉の損傷のみが健康保険の対象となっている理由でもあります。
柔道整復師は、解剖学、生理学、運動学、整形外科学、リハビリテーションなどの基礎医学から、スポーツトレーナーの養成まで幅広い分野で科学的な教育を受けています。一般の方々には東洋医学・経験医学のイメージがあるかもしれませんが、実際には全て科学的裏付けを持つ西洋医学に基づいています。
鍼灸治療は、長い間経験医学とされていました。しかし現在では、様々な科学的根拠が証明され、かつての経験医学ではなくなっています。特にツボ刺激によって出現する未知の免疫物質が確認されるなど人体の神秘に科学が追い付いてきたという方が正しいと言えます。
当院では、東洋・西洋にとらわれず、科学的根拠に基づいた施術を提供しています。基本となる神経筋整合法と、経絡療法といった経穴(ツボ)刺激を併せて行うことで、高い治療効果を発揮しています。
「體暢心愈静(たいのびこころいよいよしずか)」— これは子供の頃からお世話になった書道の先生から頂いた五字熟語です。身体がのびやかになると心も静まりリラックスできるという意味です。人間が「心身一如」の存在であることを教えてくれています。私は、身体の不思議を知るにつけ、誠に良い言葉を頂いたと感謝しています。この言葉は、いわば当院の施術のコンセプトでもあります。言葉の意味を日々の施術に生かし、患者様の健康を支えることが使命であると考えています。
当院の診療体制は、このような思いを実現するために、お一人お一人にしっかり向き合えるように設定いたしました。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
田上接骨院 院長 田上耕三
ストーリー
腕の良い骨つぎになるために
私が柔道整復師として歩み始めた頃、「良い骨つぎ」の絶対条件は、骨折や脱臼を美しく治すことでした。骨折や脱臼の整復以外のことにはそれほど重要だとは考えていませんでした。そのように考えるきっかけとなったのは、宮城県名取市に住む恩師、洞口直先生のお宅を訪れた時の経験によります。
先生が整復(骨折や脱臼を元の状態に戻すこと)した術前と術後のレントゲン写真を見せてくださいました。
交通事故で足を受傷した症例でした。足首は脱臼し、脛の下の方で腓骨の骨折もしていました。膝の近くでは脛骨が骨折し、腓骨が粉砕骨折して細かく飛び散っていました。まさに肉だけで足の形を保っている状態でした。
しかし、先生の手にかかると、その足は完璧に元の状態に整復されていたのです。整復後のレントゲン写真を見たら、例えどんな整形外科医でも骨折箇所を見分けることはできないと思いました。それほどまでに精巧に骨が、元の位置に戻っていました。
それを見た私は驚きのあまり、「こんなことがあり得るんですか!」と思わず叫んでいました。そして、自分もいつかそうなりたいと強く思いました。
先生は肩関節の脱臼を無痛で整復する方法を考案し、米国の整形外科学会で発表されました。先生から全文英文のレポートを頂き、「勉強しなさい」と言われた時は、「あぁぁ・・・」と思ったことも良い思い出です。

(左写真:田上が行ったコーレス骨折の整復後のレントゲン写真)
私が病院勤務時代、初めて行った骨折整復は、コーレス骨折(手首の骨折)でした。整復後の写真を見て、もちろん恩師の技術には遠く及ばないものの、初めてにしては非常に良い出来だと思いました。病院長から「何年かぶりにこんな綺麗な整復を見た」と褒めていただいたのは今も私の自慢です。しかし今ならもっと上手に治せると思います。
肩関節脱臼の無痛整復も、当時は意味が分かりませんでしたが、今ならよく分かります。先生の学会発表の手法は、再現性を重視して設定されていたと思います。実際の先生本来の手技は、さらに高度で患者さんの負担が少ない方法だったに違いないと今なら分かります。
学校では教わらないことを学び、「目標とすべき良い骨つぎ像」を見ることができたのは、私の大切な宝です。恩師宅へ押しかけるのは少し怖い(謎のワクワク感がありました)と思いつつも、毎回楽しみでした。